リーマンショック、東日本大震災、そしてコロナウイルス。
不景気に見舞われるたびに「今後の新卒採用は厳しくなる」と言われます。
ですが、「意識低い系大学生」だった過去の管理人はいつも不思議でした。
(大学生)
いや、ちょっと待て。なんで不景気で新卒採用が厳しくなるの?
この「不景気→新卒が厳しくなる」という矢印が、どう繋がっているのか不思議に思いませんか?例えばアメリカのどこかの銀行が倒産して、いろいろな理由で株式市場の相場が下がるのはわかります。ただ、だからと言って「日本の一企業の新卒採用が止まる」のはおかしくないですか?
社会人になってから色々な知識を得て、ようやくこの「不景気→新卒が厳しくなる」という矢印がつながりました。ただ、ここを丁寧に解説してくれる人はどういう訳かあまりいません。あまりにも常識扱いされているせいでしょうかね。常識を真面目に語ってくれる人って、いないんですよね…。
そこでこの記事では、その「常識の仕組み」をなるべく優しく解説します。
これからお話する内容は、専門家からすると「大雑把すぎる」内容です。
…が、あくまで初心者が理解するための内容です。みなさんが興味を持ったところは、自分で調べてみることをおすすめします。
不景気で新卒採用が苦しくなる仕組み
STEP1.何らかの理由で不景気になる
では、最初のステップです。
とにかく、いきなり不景気になったとします。原因は何でも良いです。アメリカのはた迷惑な銀行が倒産したとか、マグニチュード9の地震が襲ってきたとか、世界的にウイルスが流行したとか、とにかく何でも良し。それで株式相場が下がり、みんな不安になったとします。
まず、金融業が大打撃を受けます。
成長すると思っていろんなところに投資しまくってたけど、このままだと大損しそうです。とりあえず投資はやめて、手元の現金を確保しようと思います。
企業のみんなには、今の状態が落ち着くまであんまり金を貸すことはしないよ。何が起こるかわからないし…。あと、いま貸してるお金も早めに返してね。
えらい人
え?早めに返す?いまから?
それにお金も借りられなくなるって?
このようにして、金融業からお金を借りている企業が苦しくなります。また、全体的にお金を貸りづらくなるので、新規事業などもやり辛くなります(新規事業は「成功するかわからないギャンブル」のようなもの。お財布が苦しい時にギャンブルはできません)。
STEP2.企業の事業計画が見直される
えらい人
お金を借りて新しい事業を作るつもりだったけど、ムリだな。
あの事業があれば、増収増益だったんだけどなあ…しばらくはダメか。
事業計画を見直さないと、さらに株価が下がりますよ…。
企業には事業計画というものがあります。簡単に言うと「このくらい投資して、このくらい儲けます」という計画のことです。
難しく聞こえますが、大学生がバイトの予定を立てるようなもの。
「今月はたくさんバイトして来月は海外旅行に行きます」という見通しと本質的には一緒です。何をしてどのくらい儲けるつもりなのか、ということです。そしてこの見通しから外れると…怒られます。「お前、海外旅行に行くためのお金貯めるって言ってたのに、バイトしてないじゃん!」ということですね。
上場企業も一緒です。事業計画という見通しがあり、そこから外れると怒られます。
怒るとどうなるか?投資家が株を買わなくなり、株価が下がります。もちろん企業は株価が下がるのは嫌なので、事業計画を見直さなくてはなりません。
これがニュースなどでよくある「業績見通しの下方修正」というやつです。
ちなみに、上場していないとどうなるのか?
怒るのが投資家から銀行や法人といった、別の債権者に変わるだけです。怒られるのには変わりません。なので、どんな企業でも見通しは修正する必要が出てくるのです。
STEP3.人員計画が見直される
社長が「あの事業はしばらくムリだ」って。
なので、そのつもりで事業計画を書き直してくださいね。
あらやだ。それで利益を出すつもりだったのに。
やらないとなると、ウチだと…人件費削らないと利益出せないわぁ。
新卒を入れるのは、やめようかしら。
事業計画には「人件費をどのくらいかけるつもりなのか」も書いてあります。
事業が思うように成功しない見通しが高くなると、当然それも見直さなくてはいけません。人件費にも修正が入ります。
そして、新卒採用はまっさきに削られます。1人あたり2,000-3,000万円くらいのコスト削減になるからです。
え?新卒採用が3,000万円?と思うかもしれません。ですが、それが多くの企業の現実です。
新卒が自分のお給料以上に稼いでくれるようになるには3年くらいかかります。つまりその間の新卒へのお給料は「ひたすら企業が投資をしている」ということ。新卒に年400万払っているとしたら、400万×3年分で1,200万円を投資している計算です。
さらに、会社はお給料以外に社会保険料や年金なども支払っています。大雑把にお給料の1.5倍は支払っていると考えましょう。となると、企業の負担は実は年400万円ではなくて、600万円くらいです。600万円×3年で、人件費は1,800万円という計算になります。
それ以外にも様々なお金がかかります。
- 新卒を指導する先輩の時間分のお給料
- オフィスの机、椅子、パソコンなどの什器の代金
- 新卒が余計に場所を取る分のオフィスの賃料
- 採用にかかる関連諸費用(イベント費用など)…etc
これを全てひっくるめると、トータルで一人あたり2,000-3,000万円の出費になると言われています。
3,000万円というのは大金です。3人新卒を入れるだけで3年で約1億円のコストがかかる計算です。
逆に言えば、新卒を3人入れないだけで3年で約1億円の利益をひねり出せます(仕事量や収益性が変わらない前提)。なのでコストを全て管理している事業部長がまっさきに削りたがるのが「新卒採用」なのです。
STEP4.修正された人員計画が承認される
いろいろ考えたんだけど、事業計画を達成するにはこの人員計画しかないみたい。ウチの事業部、今年の新卒は「なし」でお願いするわね。
はあい。じゃあ、今年は新卒なし!
足りない場合は、適宜中途採用でカバーするってことで。
この企業の今年の新卒採用、ないじゃん!(絶望)
事業計画から人員計画が決まります。そしてその人員計画は経営会議で承認されるので、簡単に変更はできません。そして承認された計画に書いてある数字だけが、人事が採用できる人の数になるのです。
採用計画に新卒が含まれていないと、その企業の新卒採用は「なし」になります。よって就活が厳しくなるのです。
不景気になるとこのような現象が日本企業のあちこちで起こるので、新卒採用が厳しくなります。
実際に就職氷河期と言われていた時期に日本中の企業で起こっていたのが、今までの一連の流れです。
「不景気→新卒採用が止まる」の流れで就活生が知っておくべきこと
さて、この一連の流れから、就活生が知っておくべきことをまとめました。
- 新卒はとても高い買い物
企業は新卒を数人採用しないだけで億単位の利益を出せます。それでも新卒採用をする企業は、そういう覚悟でやっている、ということ。
なんとなくやってくる就活生はお断りです。
- 採用するのは事業部長が決めているのであって、人事が決めているわけではない
殆どの企業で、どういう人を何人くらい採用するのかを大まかに決めているのは「事業部長」クラスです。人事は事業部長の言うことを聞いて動いています。
もちろん、小さいベンチャー企業などでは社長が直接決めています。が、それも組織が大きくなるにつれて、部長に決める権利が移る場合が殆どです。
- 新卒採用は意外ともろい
過度に焦ってほしいわけではありませんが、新卒が採用できなくなる時期はどんな大企業でもあるものです。実際に「あの年は新卒採用やってなかったからね…」という会話は、大企業の社内でも時々耳にするはずです。
内定というのは、やはり貴重な機会なのです。
不景気でなぜ新卒が苦しくなるのか?のまとめ
いかがだったでしょうか。
いつも面接をどう突破するか考える就活でも、別の視点(企業側)から考えると、まったく異なる側面が見えてくるものです。就活生はこういった「裏側」を知っておいて損はありません。
この話から何か一つでも教訓を得て、あなたが納得の内定を得られれば幸いです。
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