2020年2月20日、新卒採用業界に衝撃的なニュースが走りました。それがこちら。
毎年数万人が参加していた、リクナビの合同説明会の中止です。
■ TNN NEWS 速報 ■
— TNN NEWS α (@Trainfo_NEWS) February 20, 2020
就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアは20日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今月22日~3月31日に予定していた合同企業説明会やイベントを中止すると発表しました。約3万~5万人の学生の参加が見込まれていました。 pic.twitter.com/fQCLinR4Hm
原因はコロナウイルスなのですが、恐らくそれだけじゃないんですね、これ。
たぶんこれ、新卒採用のあり方の変化にも繋がってくる重要な話だと筆者のYMは思っています。結論から言うと、「もう新卒採用流行りませんよ。」ということです。
このイベントが起こす変化について、いくつかの異なる分野で考察してみました。
ご笑覧ください。
この記事の内容は、人事経験者として思うところを書き綴ったもので、個人の一意見に過ぎません。就活のノウハウ的な内容でもありませんので、あしからず。
リクルートはどう動いているか
まず、運営のリクルートは大きく動いているでしょうね。
具体的には、お詫びがてらちゃっかり営業活動をしているはずです。
「サイト掲載料+イベントブース出展でたったウン百万円!」というウリ文句で契約を取ってきているリクルートキャリアの営業マンは、いま、片っ端から企業にお詫びの電話をかけていることでしょう。
ただしリクルートのことですから、お詫びの連絡を兼ねてアップセル・クロスセルの良い機会と捉えてさらに営業しているはず。私はもはや企業に属する人事ではありませんし、リクルートがいま実際にどう動いているのかは存じませんが…ただ、彼らがお詫びしながら営業しているであろうことは、もはや確信に近いものがあります笑。
彼らはヤクザ相手でも契約を喜び勇んで取ってくるような鬼の営業マン部隊です(もちろん実際にヤクザと取引すると、反社との取引扱いで上場企業としての監査基準にひっかかるのでやりませんが)。怒られつつもちゃっかりと営業しているのは間違いありません。
新卒採用市場はどう動くか
閑話休題。
リクルートが営業活動に励んでいるのは、実際には大したことではありません。問題はその次に来るトレンドです。
具体的には、イベント中止は新卒向けの大規模就活イベントの終わりの始まりかも?ということです。
ソニーもコロナウイルスの影響で就活イベントを中止しました。
ところがこれを機に「来年以降もイベントはやりません」ということになってもおかしくない。それに加えて、「新卒一括採用やめようぜ」とは経団連の弁です。トヨタの社長も「終身雇用って難しいよね」とおっしゃってます。
正直、今回のイベント中止で「リクナビはん、今年やらないの?ほなさいなら。もう新卒採用やめますわ」という企業がポロポロ出てくるのは確実だと思います。
こうなってくると数年以内、遅くても23卒あたりには「もう新卒採用やめます」と明確に言い出すところが大企業でも出てくるんじゃないでしょうか。
「中途も入れる」が普通の世界に、大企業はついていけるのか
数年以内に、こういった世界は確実にやってくるでしょう。言い換えれば「中途も新卒も一緒に入れます」が基本になるのです。
そしてその世界では、基本的には中途の方が優先されるはずです。中途は即戦力ですから。
まず、企業の給与制度が問題になる
となるとまず、旧態依然として硬直した給与体系の見直しをどうやるか?が問題になってきます。なぜなら、未だに入社年次で給与テーブルを決めている企業もあるからです。入社年次を中途に当てはめるとおかしなことになります(中途なのに新卒と同じ給与しかもらえません)。
それを直さないといけないよね、というのが近年ありがちな「職能給」から「職務給」へ、という給与制度改革の趣旨なのでした。
ここでの課題が日本の法律です。具体的には、日本の法律では労働者の同意なしに給料を下げることはできません。同意を取ればいいと言っても、それは事実上不可能です。社員に拒否されたら全てがパーになるわけですから。
なので、すでにいる社員の給料を下げずにどう移行させるか?が難しい。制度設計をよく考えなくてはいけません。
それ以上の問題「年功序列の嫉妬がはびこる」
ですが、これはまだ簡単な問題です。うまく制度設計すればいいだけの話です。
実際、お金を払えばPwCあたりがうまいコンサルをやってくれますしね。
それ以上にもっと複雑な問題があります。
それは中途をあまりにも入れまくると「社内で嫉妬がはびこる」という問題。
日本独特の「総合職」制度では、年次が古い順に役職をつけていくのが普通です。そういう世界観の会社に中途を入れまくると、どうなるか。
簡単です。年次が古い順番に役職をあげていたところに、外様の中途がやってきて邪魔をする、という流れができるのです。社内の人間からすると、とんでもない理不尽ですよね?
「オレは何十年も会社に尽くしてきたのに、よくわからん外様の中途社員が出しゃばってくる?お前、俺より先に役職がつく?ふざけんなや!」ということですね。そういう嫉妬オジサンが、制度に頑強に反対する。彼らは口に出して言うことはありませんが、不安で仕方がないので、あの手この手で邪魔をして潰すのです。
実はこっちの方がはるかに大きな問題です。私の個人的な意見では、日本企業の組織改革が失敗する最大の原因がこれだと思っています。
では、企業はどうすべきか
では、どうすればいいのか。仕事と個人を分離するしかありません。
具体的には「この仕事をするから役職をあげるんです、やらないなら役職から外れてね」という形にする、ということです。
日本では慣習として役職が上がっていく一方なのが普通なので、役職から外れると「落ちこぼれ」という烙印がつきます。が、それを「別にいいじゃない」という考え方にする。
素直に考えれば、人間には得意・不得意が絶対にあるので、向いていないならその仕事から降りるのは自然なことです。
実際、そういった考え方は海外では当たり前です。だからこそ、海外の企業では「役職付きマネージャー」と「平社員」は全く異っているのです。
仕事と個人を分離するとどうなるのか
仕事と個人が分離されている日本以外では、どうなっているのか?
「高給のマネージャー」と「お給料そこそこのやる気のない社員」に分かれているのが普通です。そして「高給のマネージャー」は、「役職」をきちんと果たしているから高給なのであって、「役職」にくっついてくる仕事に興味がないなら、平社員をやるしかありません。よって海外の平社員はやる気がないのです。
ただ、やる気がなくてもマネージャーから振られた仕事をこなしている限りはクビになりません。だから定時に帰れるのです。仕事を果たしていればよいので。
ちなみに、これは欧米企業のスタンダードだと思われがちですが、違います。
欧米ではなく、世界中のスタンダードです。欧米はもちろん東南アジアでも、中韓あたりもひっくるめて、これが世界中の普通の企業の姿です。役職と個人が別れていないのは日本しかありません。
普通の人にこの制度改革はムリです
ただ、言うのは易し、行うは難し。
日本の古い体質の従業員数万人の大企業で「仕事を個人を分離する制度改革をやります」というのは超絶難しい。
ダンバー数(※人間が顔と名前を覚えていられる人の数。「社員全員顔見知り」の企業は、従業員数がダンバー数以下ということです)に満たない企業規模なら、まだいけるでしょう。ですが、それ以上の規模の会社となると…企業内で普通のキャリアを積んできた人には、おそらく不可能です。この手の制度改革には強烈なリーダーシップと、広範で確かな実務経験が必要になります。
こういう時は、社外から有能な経営者を数十億円で雇うというのが世界標準です。
ターンアラウンドがうまい経営者あたりですかね。ところが日本では残念すぎる「ムラ社会(笑)」のせいで、そういうことをやろうとすると嫉妬の対象になって上手くいかないか、追い出されてしまうようです。
それを図らずも証明してしまったのが、日産の元会長であるゴーン氏の逮捕でした。
検察と自動車メーカーがお友達同士グルになって目障りなガイジンを追い出したという事件ですが…正直あんな事件を起こしたら、海外の有能経営者は誰も日本企業を救おうとは思わないのが普通でしょう。
ゴーン氏の犯罪行為を容認するわけではありませんが、それだけのインパクトがあったということは認識する必要があります。
となるともう、変化についていけない日本企業は潰れるしかないかもしれません。実際にシャープは潰れましたしね。
学生にはどう影響するか
そして筆者が新卒一括採用の変化にあたって次に心配なのが、職務給制度に転換したとき、いったい誰が新卒の面倒を社会的に見てくれるのか?という問題です。
海外だとここらへんは「インターンをやれ」or「若者は世界を放浪してこい」といった、雑な回答しかないのが現実です。
例えば、ヨーロッパに行くと若いバックパッカーが沢山います。言ってしまえば彼らは大学を卒業しても定職につけないので、ヨーロッパ中をフラフラしているのです。そうやって旅先でバーテンダーやら、ホテルでバイトしたりしながら、認められて正社員になり、さらにマネージャーになって…というのが、欧米の姿です。
…それと比較すると日本企業は超優しいですね。
今の日本で職務給制度が完全に普及して「新卒ほっときます」という文化ができたらどうなるか。
欧米のように、バックパッカーが流行りだすことだけはまずありえないでしょう。
飲食・アパレルに就活生が殺到する
恐らく、毎年正社員を一定数必要とする業界に新卒学生が殺到するはずです。飲食業界や、アパレル、コンビニ・小売業界は毎年一定数の正社員を必要としています。そこで大卒で飲食店やら服屋のチェーンの店長を延々とやるのが、就活のメイン層になりそうです。
もちろん大卒で飲食業界に行くがダメとは言いませんし、筆者のYMはそういった業界で頑張っている方を尊敬しています。ですが、「大学という若者の教育コストを4年間もつぎ込んでおいて、みんながみんな飲食・アパレルに行くの?それ、社会的にもったいないのでは?」とは思います。
もちろん、その業界に行きたい人が行くのは問題ありません。が、行きたくもない人が働き口を見つけるために無理やり飲食やアパレルやります、というのが健全だとは思えません。
中間層は手に職をつける
その次に考えられるのが、何らかの手段でもって手に職をつけるという考え方。
これはもう一部の就活生がやっていますね。プログラミングスクールの流行もそうですし、大学生がYoutuberをやりたがるのも、これに入るでしょう。
もしくは大学で金融工学や会計、マーケティング、さらにはコンピューターサイエンスなど「就職したら直接的に金になる」学部に人が集まるようになるでしょうね。それ自体は健全なことだと思います。
…が。日本の大学で、満足の行く教育を行っている大学がほぼないのが問題です。特に文系がひどい。日本の大学生の約半分は、本を全く読みません。
こんな状況なので、残念ながら今の日本の大学では、全く「専門性」は期待できません。
教科書をそのまま読経のごとく朗読する教授と、スマホとタピオカ、サークル活動に夢中な学生しかいないのが、日本の大学です。
そうなると、次のようになるでしょう。
就活生が海外に流出する
出来るヤツから海外に逃げるでしょう。
具体的には、英語もしくは中国語が話せる就活生・大学生・高校生は海外に行った方がいいよね、という世界がもうすぐそこまで来ています。
実際に、これは研究者の世界ではとっくに起こっています。博士号をとってもポスドクが日本社会では全くない。働き口もないので、海外に行く。移住する。そして、それができない人だけが国内に残る。そういったことはずっと起こっています。
これからは就活生であっても、優秀層から海外に行ってしまうはずです。
となると、本格的に日本企業の人材の質が劣化していきます。商社だろうとメーカーだろうと「最近イマイチな学生しか来ないよね」ということになるでしょう。いま、かつての人気業界だったメガバンクから「最近、良い学生が来ない」という人事担当者によるコーラスが流れていますが、それが日本の企業社会全体のコーラスになる日は遠くないはずです。
こうなってしまったら、日本は植民地国家と変わりません。海外の企業との競争で人材の質も負け、稼ぐ力もなくなり、ジリ貧に追い込まれるでしょう。
「新卒一括採用の次に来るもの」とは?
…といろいろとご紹介しましたが、正直ここまで来ると、その次にどういった動きが来るのかは分かりません。今まで書いてきたことも、単なる(悲観的な)一つの予想に過ぎません。
恐らく、誰も今の世の中で流れを読み切っている人はいないでしょう。将来は本質的にはわからないのです。
それでも、私は日本の明るい未来を信じています。
若者が自由になった時に、何が起こるのかは本当に未知数です。人類の歴史は若者の自由さによって刻まれてきた、といっても過言ではありませんから。
明るい未来を信じつつ、今日はここで筆を置きたいと思います。
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