「文系は就職先がない」ってほんと?
そう思って、不安な文系就活生は意外と多いのではないでしょうか。
はい、嘘です。絶対にそんなことはないです。私が上場企業の元人事関係者として、そして元文系就活生として、様々な反論をしていこうと思います。
「文系は就職先がない」は嘘な理由
まず、大まかなデータから見ていきましょう。世の中の傾向として、本当に「文系は就職先がない」というのほ本当なのでしょうか。
「文系は就職先がない」の嘘1:文理の就職率の差は0.7%
まず、全体的な傾向から掴みましょう。といっても難しくありません。こちらは日本経済新聞の2020年6月の報道です。
- 文系就職率…97.8%
- 理系就職率…98.5%
- 差…0.7%
文系と理系の差はたったの0.7%という、非常に微々たる差しかありません。
付け加えると、この調査の主催は国です(文部科学省と厚生労働省の合同調査)。分母は「就職を希望している学生」。つまり、このデータを参照すれば「文系と理系では文系のほうが不利」というのはただの迷信だということがわかります。
結論は変わらないのですが、細かい部分では補足が必要でしょう。
まず、この調査の条件は以下の通り。
就職率は就職希望者のうち、実際に職に就いた人数の割合を指す。調査は全国の国公私立大62校を抽出して4770人を対象に実施した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60279720S0A610C2MM0000/
2020年4月1日時点の新卒(つまり20卒であり、すでに卒業した新社会人)を対象に、調査が行われています。
これって、時期的にはコロナの影響が具体化する前なんですよね。また、そもそも就活のために留年した学生はアンケートの対象者に入っていません(その年の就職希望に入らないため)。そのため、実際の体感値とは差があるでしょう。
もっと専門的な話をすると、「同世代の大学生は50万人くらいいると言われているのに、たったの4770人の母集団の調査が信頼できるのか」という統計学的な信頼度を疑う声もあるでしょう。
統計学的に答えるのなら、この点は問題ありません。
統計学的に有意とされる「信頼度95%、許容誤差5%」で母集団50万人のサンプル調査を行う場合、求められるサンプルサイズは383.86人です。この調査は4770人から回答を得ているので、かなり信頼できると言えます(何を言っているのかわからないという方は、とにかく統計学的に考えるとこの調査方法そのものは十分に信頼できるんだな、と思っていただければ大丈夫です)。
ただし、この計算が有効なのは母集団から正しく均質なサンプルを得ている場合のみです。この調査ではかなり恣意的なサンプリングをしているので、就職率が約98%という数字そのものは正確な数字ではないと筆者は考えています。
…ただ、文系学生も理系学生も同じ条件で調査しているため、文理の就職状況で差がないという結論は変わりません。
就職率が98%という数字の正しさはともかく、文理で差がないという点については信頼できます。
「文系は就職先がない」の嘘2:内定獲得は理系が早いが、トータルでは変わらず
とはいっても「最終的に約98%の人が就職できているだけで、文系の方が就活そのものは苦労しているんじゃないの」という反論が飛び出してくるかもしれません。そこで、就活における、内定獲得時期の差を見てみましょう。
2020年卒の文系・理系それぞれの時期別の内定獲得時期がこちら(青が文系、赤が理系)。さきほどとは別の調査が出典なので、数字も異なります。
グラフをよく見ると、確かに理系は文系よりも早めに内定を得ている傾向があります。その証拠に、下の黄色のグラフ(文系と理系での内定獲得率の差)は5月1日頃に最大14.5ポイント差で、理系の方がより内定を得ている状態です。
ただし、それも就活の後半になると文系が怒涛の追い上げを見せます。特に8月1日以降では、文理の内定獲得率の差はわずか5ポイント以内。文系は理系よりも内定獲得が遅いのは事実ですが、トータルで見ればきちんと内定を得ているのです。
理系は文系よりも数ヶ月早く内定を得られる傾向があるだけ。就活全体の期間で比較すると内定率にそこまで大きな差はないというのが、データで見るリアルな就職状況と言えるでしょう。
なので、声を大にして言いましょう。
文系のみなさんは就職を恐れる必要はありません。きちんと就職できます。理系と同じように、文系の方が有利になりやすい職種もあります。自信を持ちましょう!
では、具体的に文系が就職で有利になりやすい職種を見ていきましょう。
文系が就職で有利になりやすい職種
1.営業職全般
営業職は、基本的に最も文系が有利になりやすい職種です。一般的に理系は「専門家」なので、相手がわかっている前提で話をします。文系は専門家であっても相手にわかるように話すことが求められることが多いので、営業職に向いているのです(相手にわかってもらえないとサービスや製品が売れず、営業にならない)。
実際に、文系学生のおよそ7割が何らかの形で営業職に就くと言われています。営業職に抵抗のある人もいるかもしれませんが、社内での地位は強く、様々な人と関わるので人間ドラマもあり、巨額の契約を扱う劇的なプレゼンの機会もあったりするなど「やってみたら結構楽しい」というのが特徴です。
2.管理部門(金融・人事・マーケ・法務・会計など)
さらに、営業と並んでもう一つ、会社の主要な組織である管理部門も、文系の学生が向いている職種です。管理部門であっても、人と人のコミュニケーションは欠かせません。金融でも人事でもマーケでも、人と会って方針を決め、それを誰かに伝えることは営業と何ら変わらないからです。
もちろん、それが管理部門という会社の中のセクターである必要はありません。金融系の企業でも、小売や建設、自動車やITを手掛ける企業であっても、文系ならではの「伝える」という強みが発揮されやすいことは変わりません。
3.プランナー・ディレクター・記者などクリエイティブ系
さらに、文系の本領が発揮されるのが「クリエイティブ系」の仕事です。例えばCMプランナーは常にチームで動き誰かとコミュニケーションを取らなければ、仕事になりません。Webディレクターも、複雑な物事をチームでコミュニケーションを取りつつ、方向性をまとめるのが仕事です。
また記者は文章力が活きる職種。デザイナーは一つの物事をいくつも解釈するような、発想の柔軟さが鍵になる仕事です。そのような仕事は、理系よりも文系がはるかに重宝されやすいようです。実際に筆者もディレクターの経験がありますが、理系出身の人というのは殆ど聞きません。
文系が就職しやすい、人気の業界とは?
では、職種ではなく業種ではどうなのでしょうか。
いくつか代表的な例を見てみましょう!
1.文系就職ナンバーワン「商社」
商社はどこかで聞いたことがある「三菱・三井・伊藤忠・丸紅・住友」だけ、なんて思っていませんか?それはとんでもない間違いです。
世の中には商社がたくさんあり、とくに食品や化学のような専門商社ともなると星の数ほどもあります。いずれの企業も貿易を行ったり、企業同士の取引をまとめて発注したり、さらには投資を行っている企業もあります。
こういった企業では法人同士のコミュニケーションによって利益を確保していることも多いため、文系は歓迎されやすいです。
2.文系にも根強い人気の「鉄道・電力・ガス・航空」
技術系の仕事も多いのでは…?と思う方。確かにそれは半分正解です。技術職の採用も多く、文系とは別枠で技術職の採用や人材育成も熱心に行っています。
ですが、文系の学生も大量に採用しています。例えば鉄道会社や航空各社はグループ企業も多く、ホテルやテーマパーク、さらには広告関連企業といった、まったく異なる企業をグループ傘下に収めていることは珍しくありません。
グループ全体で数千人もの採用を行うこともあり、文系であれば比較的狙いやすく、入りやすい業界でもあります。
3.華やかな仕事も!「マスコミ系」
近年何かと批判を浴びることが多いマスコミ系ですが、「マスコミュニケーション」が元の言葉とだけあって、コミュニケーションを得意とする文系が最も活躍しやすい業界の一つといえるでしょう。
多くの場合、制作のプロデューサー、プランニングやディレクション、さらには実際に記事を書く記者など、多くの人の目につきやすい仕事をすることも多く、学生からは一定の人気を誇ります。ただ、その一方でそれを支える広告営業や出版業務、制作現場での下積みといった、あまり目につかないながらも重要な仕事が沢山あることを忘れてはいけません。
4.かつての花形で強い影響を持つ「銀行・証券」
銀行・証券は近年リストラが相次いでいるほか、早期退職などで経営のスリム化が目指されているなど、最も動きが激しい業界のうちの一つです。
日系大手金融企業は苦戦していますが、その一方で外資系金融企業や証券各社の勢いは健在。またネット系銀行も影響力を地味に伸ばしてきており、業界再編の真っ只中にありながらも、今後の新たな成長が期待できる業界でもあります。
5.文系でもエンジニアになれる「IT系」
ひとくくりにIT系といっても、かなり幅が広い業種になります。手掛けているのは金融系のサービスである場合もありますし、製造業関連のサービスかもしれませんし、人事総務系のツールかもしれません。ただ、プログラミングの力でそれを作り出すという点だけが共通しているのがIT系の実情です。
そしてこのIT産業ですが、慢性的なエンジニア不足に悩まされています。きちんとした技術力が身についているのであれば、比較的自由な働き方が認められていることもあって副業をしながら収入を増やしていくことも可能です。
ただ、常に勉強し続ける必要があるため、文系の中でも勉強が好きな人が向いている業界だと言えるでしょう。
文系の就職で落とされないコツは?
文系の学生を取る企業は、言ってしまえば「専門性がなく、コミュニケーション能力と今後の伸びしろにかかっている」という点を魅力に感じて学生を採用します。
コミュニケーション能力は、相手の求めていることを聞き出して、自分なりに価値を発揮しようとする能力のこと。営業でもマーケでも、人事でも総務でもこれは同じです。つまり、相手の求めていることをどれだけ汲み取って、修正していけるかが肝になります。
そして、その会社の人として活躍してもらうためには「伸びしろ」が重要です。伸びしろがないと、成長してくれないことになりますからね笑
なので、相手のことをきちんと聞き出し、それに合わせた自分の強みを伝えると共に、成長性をアピールするのが文系の就職のキモになります。
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